第2話 北國とおり物語『店舗を壊して火を止めた、3代続く理容室』

2019/06/14

町で生まれ、生きてきた歴史をお聴きし、その中から次の町をつくっていく糧を発掘していく『北國とおり物語』の第2回。

昭和元年「ひろた理髪店」として開業、現在は3代目が継ぐ「ヘアーサロンひろた」。

2代目外嘉さんと奥さんの敏子さん、3代目の明さんに、町の歴史、お店の物語を伺いました。

初代の彦三さんは、父親の仕事の関係でで金沢から小松へ移られたことをきっかけに、

理容の技術習得ののち、店舗を構え昭和元年に開業されました。

左から:明さん(3代目)・外嘉さん(2代目)・敏子さん・モップ

 

 

受け継がれた思いと技術

 

「ヘアーサロンひろた」では現在、2代目外嘉、とその妻敏子、3代目の明3人の理容師がお店に立つ。

先祖は西郷隆盛を首領とする西南戦争にかかわり、加賀藩で決起した時に日本武尊の像に、先祖の名前が書かれている。

西郷隆盛と関わった先祖をもつ初代彦三の開業の経緯は、

 

 

Q. なぜ金沢から小松へきて散髪屋を開業したのでしょうか

敏子「おじいちゃん(彦三)のおやが裁判所の検事やったらしいから、小松へ来た」

 

 

初代彦三、なぜ理髪店を志す経緯は誰も聞いておらず分からないそうだが、

1924年19歳の時に西町へ移り、昭和元年(1926年)に「ひろた理髪店」を開業する。

しかし、開業した理髪店の建物を取り壊さなければならない事件が起きる。

昭和7年の市中心部を焼き尽くした大火である。

 

「ひろた理髪店」へ町を飲み込むように大火が迫る中、現代のような設備もなく、ある決断を当時の人たちはした。

家を壊す、理髪店の建物とその隣の家を壊し、密接していた民家が並びに空白を設けることで、燃え広がらないようにした。

その名残は、理髪店の前の道路を見ればわかると、外嘉さんが外へ出て説明くださった。

前の道は広いが、急にその先へ伸びる道は狭くなっている。

 

急に狭くなる、ヘアーサロンひろたの前の道

 

町のために建物を壊し、再建し、理髪店は彦三さんから、外嘉さんへ引き継がれる

外嘉さんは昭和12年に生まれ、小学校入学の頃に太平洋戦争が開戦。

通っていた芦城小学校では、正門付近で竹槍を突く練習をする上級生、運動場はさつまいも畑が当たり前だった。

物資が不足していた戦中を過ごしたこともあって、戦後に仕事に就く年齢になると、饅頭屋など食べ物に困らない職業に憧れを持っていた。

外嘉さんに経緯を語っていただいた

 

 

中学卒業した当時に、誰かが後継がないとということで、

本当は、うどん屋か、まんじゅう屋に修行にいきたかったと、食べ盛りで、

散髪屋やったら髪の毛食べるわけにいかんと、お父さんいつも言っとった。

そやけど、誰か継がんなんということで、大阪行ったんやわ。

 

 

そして、親の後を継ぐために大阪で理容の修行の後に、「ひろた理髪店」を継ぐ。

その後、敏子さんと結婚され、昭和42年3代目の明さんが誕生する。

明さんは、18歳で理容学校に通い、5年間東京で修行後に24歳で小松へ帰っきて今に至る。

3世代の共通した理容道具は、業界では使用する人が減っている日本カミソリだそうだ。

何年も丁寧に研ぎ石で研ぎ、つるりとなめらかにヒゲを剃ることができる。

 

 

明さん:床屋さんのカミソリの次に切れるのがメスぐらいや、その次ぐらいに切れ味がいい

 

長年丁寧に研ぎ使われている、日本カミソリ

 

 

町への想いと行動

 

3代にわたり、町のためにも尽くしてきた。

曳山子ども歌舞伎の世話役である「五人衆」には、3世代が経験。

現在、明さんは町内会活動でコミュニティづくり、仕事ではセーフティネットづくりと町に対して尽くしている。

外嘉さん、明さんへ自分の町への想いを伺った。

 

 

外嘉さん:

もっと活性化してくれたらいいと思っている

なんかの町内の時にでてきてくれて、若い衆が

ほやけど今は 年寄りばっかなっとる

 

明さん:

自分の町、西町に対して、昔みたいに活気戻って欲しい、

人手不足、少しでも町民増えて欲しい

 

 

2人とも、人が増え賑わいが生まれることを望んでいる。

子ども歌舞伎の曳山・町費安くするよう、婦人会がイベント時に昼飯つくるなど、町民総出で出来ることを協力し合い、業者への発注をなるべくおさえている。

公民館長でもある明さんは、お金をかけず創意工夫で、町のコミュニティづくりの為にもイベントを数多く取組んでいる。

竹釣り、ナイトウォーキング、ミニかどまつ、健康麻雀など。

明さんの代より、多くのイベントを実施したことにより、西町住民の日常的に出会う機会が増えている。

昔みたいに活気戻って欲しいと願う明さん、まずは町内の活気づくりからだそうだ。

また、町内だけではなく自身の店でセーフティネットの取り組みも行っている。

小松理容組合の加盟店に呼びかけ「こまつ382番」という、理髪店の客待ち場所を子ども、お年寄りに自由に使ってもらい、日常のコミュニティの場として開放することで、認知症発見、ゲートキーパー、オレンジリングなど、セーフティネット構築に取組んでいる。

 

小松理容組合がとりくむ「こまつ382番」(さん・ぱ・つ)

 

 

3世代にわたり、町のために尽力されてきた廣田さん。

また、若い衆に戻ってきてほしいと、日々できることから取組んでいく。

2020年は西町が曳山の当番町、西町の曳山と共に町内の創意工夫にも注目したい。

 

 

看板犬・モップちゃん

看板犬・モップちゃんの横顔

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[ヒアリング・文・写真] 田村 薫

 

「新」と「旧」を兼ね備えたとおり町です。